コラム
お役立ち情報
Column
保護者や卒業生、企業などからの寄附金は、学校法人の大切な財源のひとつです。しかし「一般寄附と指定寄附の違いは?」「建物建設のための寄附はどこに計上するのか」など、会計処理で迷う場面も多いのではないでしょうか。この記事では、学校法人会計基準における寄附金の基本的な考え方と仕訳のパターン、実務で注意したいポイントを整理します。日々の入力だけでなく、計算書類の表示や基本金との関係まで俯瞰して確認できる内容となっていますので、自法人の処理を見直すきっかけにしていただければ幸いです。
学校法人会計基準では、寄附金は大きく次のように整理されます。
まずは「使途の有無」と「資産取得との関連」がどこにあるかを意識して区分することが重要といえます。
代表的な仕訳例を整理します。会計ソフトの科目体系に合わせて読み替えていただいて問題ありません。
仕訳を検討するときは「収益区分」と「資産計上の要否」をセットで確認すると分かりやすくなります。
学校法人特有の論点として、寄附金と基本金との関係があります。
「寄附を受けた年度」と「資産が完成した年度」が異なることも多いため、スケジュール管理と議事録(寄附金の受入れ・基本金組入れの承認)をあわせて整備することが大切になります。
例えば、PTAがエアコン設置費用を全額負担し、請求書もPTA宛で支払いもPTAが行ったケースを考えます。
同じ「PTA負担の工事」でも契約関係で会計処理が変わるため、実務では事前にスキームを確認しておくと安全です。
記念グッズを送付するなど対価性が強い場合は、寄附金ではなく売上(収益事業)として扱う可能性もあります。寄附と販売の境界は税務上も論点となるため、企画段階から会計・税務の確認をしておくと安心でしょう。
寄附金はステークホルダーの関心が高い項目です。次のような体制整備も意識したいところです。
これらを徹底することで、寄附者や保護者に対する説明責任を果たしやすくなり、法人運営への信頼向上にもつながっていきます。
学校法人にとって寄附金は、教育・研究の質を高めるための重要な財源です。一方で、経常寄附か特別寄附か、現物寄附か、基本金への組入れが必要かなど、判断すべきポイントは少なくありません。寄附の受付段階からスキームを整理し、会計処理・基本金・開示まで一貫して設計することが、トラブル防止への近道となります。自法人の寄附金処理に少しでも不安がある場合は、学校法人会計に詳しい専門家に相談しながらルールを整備していくことをおすすめします。