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学校法人監査

2023.5.30

【学校法人会計】寄附金処理 実務ポイントと注意点

保護者や卒業生、企業などからの寄附金は、学校法人の大切な財源のひとつです。しかし「一般寄附と指定寄附の違いは?」「建物建設のための寄附はどこに計上するのか」など、会計処理で迷う場面も多いのではないでしょうか。この記事では、学校法人会計基準における寄附金の基本的な考え方と仕訳のパターン、実務で注意したいポイントを整理します。日々の入力だけでなく、計算書類の表示や基本金との関係まで俯瞰して確認できる内容となっていますので、自法人の処理を見直すきっかけにしていただければ幸いです。


寄附金の種類と基本的な考え方

学校法人会計基準では、寄附金は大きく次のように整理されます。

  • 使途の定めがない寄附金>
    日常の教育研究活動や運営全般に充てることができる寄附金です。原則として経常収益の「寄附金」として処理します。
  • 使途が指定された寄附金
    「奨学金原資として」「新校舎建設のために」など、目的が明確に決められているものです。施設整備や基金積立に充てる寄附金は、特別収益の「特別寄附金」に区分されるケースが多くなります。
  • 現物寄附(備品・図書・土地建物など)>
    金銭ではなく物で受ける寄附です。受入時点の時価をもとに資産計上し、同額を寄附金収益として認識する形が基本となります。

まずは「使途の有無」と「資産取得との関連」がどこにあるかを意識して区分することが重要といえます。


寄附金の基本的な仕訳パターン

代表的な仕訳例を整理します。会計ソフトの科目体系に合わせて読み替えていただいて問題ありません。

  • 使途の定めがない現金寄附を受けたとき
    • 借方:現金
    • 貸方:寄附金収入
  • 新校舎建設のための寄附金を受けたとき
    • 借方:現金
    • 貸方:特別寄附金
  • 寄附金で建物を取得したとき
    • 借方:建物
    • 貸方:現金
      (同時に必要に応じて、後述の基本金への組入れを行います)
  • パソコンなど備品の現物寄附を受けたとき
    • 借方:備品
    • 貸方:寄附金収入

仕訳を検討するときは「収益区分」と「資産計上の要否」をセットで確認すると分かりやすくなります。


基本金との関係を押さえる

学校法人特有の論点として、寄附金と基本金との関係があります。

  • ・校地・校舎等の取得に充てる寄附金は、第1号基本金として組み入れる対象となる場合があります。
  • ・寄附金で建物を建設したケースでは、建物の取得完了時に
    • 借方:特別寄附金取崩額
    • 貸方:第1号基本金
      などの振替処理を行うパターンが典型的です。

「寄附を受けた年度」と「資産が完成した年度」が異なることも多いため、スケジュール管理と議事録(寄附金の受入れ・基本金組入れの承認)をあわせて整備することが大切になります。


実務でつまずきやすいポイントと具体例

1. PTA等からの寄附の扱い

例えば、PTAがエアコン設置費用を全額負担し、請求書もPTA宛で支払いもPTAが行ったケースを考えます。

  • ・学校法人が工事契約の当事者でない場合
    → 法人の会計には計上せず、備品や建物の管理だけ法人で行う運用も見られます。
  • ・一方で、PTAから現金を預かり、学校法人名で工事発注・支払いを行う場合
    → 受入時に「寄附金収入」、支払時に「建物(または構築物)」を計上する流れとなります。

同じ「PTA負担の工事」でも契約関係で会計処理が変わるため、実務では事前にスキームを確認しておくと安全です。

2. クラウドファンディング型の寄附

記念グッズを送付するなど対価性が強い場合は、寄附金ではなく売上(収益事業)として扱う可能性もあります。寄附と販売の境界は税務上も論点となるため、企画段階から会計・税務の確認をしておくと安心でしょう。


寄附金の情報開示と内部統制

寄附金はステークホルダーの関心が高い項目です。次のような体制整備も意識したいところです。

  • ・寄附金募集の方針や使途を理事会で決定し、議事録に残すこと
  • ・寄附者別の管理台帳を作成し、領収書を連番で保管すること
  • ・計算書類や事業報告書で、主要な寄附金の内容と使途を分かりやすく記載すること

これらを徹底することで、寄附者や保護者に対する説明責任を果たしやすくなり、法人運営への信頼向上にもつながっていきます。


まとめ

学校法人にとって寄附金は、教育・研究の質を高めるための重要な財源です。一方で、経常寄附か特別寄附か、現物寄附か、基本金への組入れが必要かなど、判断すべきポイントは少なくありません。寄附の受付段階からスキームを整理し、会計処理・基本金・開示まで一貫して設計することが、トラブル防止への近道となります。自法人の寄附金処理に少しでも不安がある場合は、学校法人会計に詳しい専門家に相談しながらルールを整備していくことをおすすめします。

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