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学校法人監査

2024.3.8

【学校法人会計】学校法人会計の基本金とは?実務担当者の入門ガイド

学校法人の決算を担当していると、「第1号基本金?第4号基本金?」「基本金組入額ってどの勘定?」と、そもそも基本金のイメージがつかみにくいと感じる方が多いです。基本金の考え方があいまいなままだと、固定資産の取得や借入金の返済計画も立てにくくなります。この記事では、学校法人会計における基本金の意味と4つの区分、組入れ・取崩しの実務ポイントを整理します。読み終わるころには、「基本金=学校を守るために残しておくお金」という感覚がつかめるはずです。

1.学校法人会計における「基本金」とは

学校法人会計基準では、基本金は「学校法人がその諸活動の計画に基づき必要な資産を継続的に保持するために、その事業活動収入のうちから組み入れた金額」と定義されています。

ポイントをかみ砕くと、次のようなイメージです。

  • 教育・研究活動に必要な資産を、長期的に維持するための「守るべきお金」
  • 事業活動収入から意識的に取り分け、消費支出に回さないようにする金額
  • 貸借対照表の純資産の部に「基本金」として表示される科目

株式会社の「資本金」が株主からの出資を意味するのに対し、学校法人の基本金は寄付金や授業料収入などから積み立てた、学校を永続させるための内部留保に近い考え方といえます。


2.4つの基本金区分(第1号〜第4号)の整理

学校法人会計基準では、基本金は次の4つに区分されます。

  • 第1号基本金
    学校法人が設立当初に取得した教育用固定資産や、学校の新設・規模拡大・教育充実のために取得した固定資産の価額(自己資金部分)。
  • 第2号基本金
    将来、学校の新設や設備拡充のために取得する固定資産のために、あらかじめ積み立てておく資金。いわば「将来の校舎・設備の頭金」です。
  • 第3号基本金
    基金として継続的に保持し、運用する資金。奨学基金など、目的を定めて長期運用するお金が該当します。
  • 第4号基本金
    文部科学大臣が定める「恒常的に保持すべき資金」の額。人件費や教育研究費等の一定月数分を基準に計算することとされており、教育活動を安定的に続けるための運転資金のような位置づけです。

実務では、第1号基本金=固定資産、第4号基本金=運転資金、とまず大きくイメージすると整理しやすくなります。


3.基本金の組入れと未組入の考え方

(1)自己資金と借入金で処理が変わる

固定資産を自己資金だけで取得した場合、その取得価額は原則として第1号基本金に組み入れるべき金額になります。

一方、借入金や未払金で取得した部分については、返済したタイミングで徐々に基本金に組み入れるという扱いです(基準第30条第3項)。

(2)簡単な仕訳イメージ

例:自己資金5,000万円・借入金5,000万円で校舎(建物)1億円を取得し、自己資金部分5,000万円を一括で第1号基本金に組み入れる場合

(取得時)

  • 借方:建物 100,000,000
  • 貸方:現金預金 50,000,000
  • 貸方:長期借入金 50,000,000

(決算整理で第1号基本金に組入)

  • 借方:第1号基本金組入額 50,000,000
  • 貸方:第1号基本金 50,000,000

借入金分については、返済のたびに相当額を第1号基本金に振り替えていくことになります。

(3)「基本金未組入高」のチェック

固定資産の取得価額から第1号基本金残高を差し引いたものが「基本金未組入高」です。未組入高が大きいと、将来の組入れ負担も大きくなります。新しい説明会資料では、計算書類の注記として「基本金未組入高」を明示することが求められています。

固定資産台帳と第1号基本金明細書を突き合わせ、毎年「どれくらい未組入が残っているか」を確認することが重要です。


4.基本金取崩しの実務上の注意点

固定資産の除却・売却や、基金の目的が達成された場合には、対応する基本金を取崩します。

例:帳簿価額8,000万円の校舎を除却し、第1号基本金残高も8,000万円ある場合

  • 借方:第1号基本金 80,000,000
  • 貸方:第1号基本金取崩額 80,000,000

事業活動収支計算書では、「基本金取崩額」として収入計上され、その後、設備の建替えのための積立金に振り替えるなどの処理を行います。

実務でよくあるミスとしては、

  • 固定資産を除却したのに、第1号基本金を減額し忘れる
  • 第2号・第3号基本金を取崩したのに、基金残高の管理が追いついていない
    といったケースがあります。

固定資産の除却・売却の仕訳を起票するときは、必ず基本金残高も同時に確認するという運用ルールを作っておくと安心です。


5.経営層が確認したい3つのチェックポイント

基本金は、単なる会計上の区分ではなく、「この学校を長く続けるために、最低限守るべきお金」のラインを示しています。理事長・学長クラスでは次の点を定期的にチェックすると有効です。

  • 貸借対照表の純資産のうち、どれだけが基本金として確保されているか
  • 第1号基本金と教育用固定資産のバランス(未組入が膨らみすぎていないか)
  • 第4号基本金が基準額を下回っていないか、下回っている場合の回復計画

実務担当者としては、

  • 年1回は「固定資産台帳 × 基本金明細書 × 借入金明細書」で突合すること
  • 新しい設備投資や借入を行う際には、「取得後の基本金組入れ計画」を理事会資料に添付すること
    を意識しておくと、金融機関や所轄庁からの説明要請にも対応しやすくなります。

まとめ

学校法人会計における基本金は、

  • ①教育・研究活動に必要な資産を継続的に保持するための「守るべきお金」であり
  • ②第1号〜第4号の4区分で、固定資産と運転資金の両方をカバーし
  • ③取得原資(自己資金か借入金か)や取崩しの場面ごとに、組入れ・取崩しのルールが決まっている
    という仕組みです。

まずは自法人の

  • 第1号〜第4号基本金の内訳
  • 基本金未組入高の金額
  • 第4号基本金が基準額を満たしているか
    を一度一覧にし、現状を「見える化」するところから始めてみてください。

基本金の区分や組入計画、取崩しの処理に少しでも不安があれば、学校法人会計に詳しい公認会計士に早めに相談することで、決算や監査の場面でも安心して説明できる体制づくりにつながります。

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