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学校法人の決算を担当していると、「第1号基本金?第4号基本金?」「基本金組入額ってどの勘定?」と、そもそも基本金のイメージがつかみにくいと感じる方が多いです。基本金の考え方があいまいなままだと、固定資産の取得や借入金の返済計画も立てにくくなります。この記事では、学校法人会計における基本金の意味と4つの区分、組入れ・取崩しの実務ポイントを整理します。読み終わるころには、「基本金=学校を守るために残しておくお金」という感覚がつかめるはずです。
学校法人会計基準では、基本金は「学校法人がその諸活動の計画に基づき必要な資産を継続的に保持するために、その事業活動収入のうちから組み入れた金額」と定義されています。
ポイントをかみ砕くと、次のようなイメージです。
株式会社の「資本金」が株主からの出資を意味するのに対し、学校法人の基本金は寄付金や授業料収入などから積み立てた、学校を永続させるための内部留保に近い考え方といえます。
学校法人会計基準では、基本金は次の4つに区分されます。
実務では、第1号基本金=固定資産、第4号基本金=運転資金、とまず大きくイメージすると整理しやすくなります。
固定資産を自己資金だけで取得した場合、その取得価額は原則として第1号基本金に組み入れるべき金額になります。
一方、借入金や未払金で取得した部分については、返済したタイミングで徐々に基本金に組み入れるという扱いです(基準第30条第3項)。
例:自己資金5,000万円・借入金5,000万円で校舎(建物)1億円を取得し、自己資金部分5,000万円を一括で第1号基本金に組み入れる場合
(取得時)
(決算整理で第1号基本金に組入)
借入金分については、返済のたびに相当額を第1号基本金に振り替えていくことになります。
固定資産の取得価額から第1号基本金残高を差し引いたものが「基本金未組入高」です。未組入高が大きいと、将来の組入れ負担も大きくなります。新しい説明会資料では、計算書類の注記として「基本金未組入高」を明示することが求められています。
固定資産台帳と第1号基本金明細書を突き合わせ、毎年「どれくらい未組入が残っているか」を確認することが重要です。
固定資産の除却・売却や、基金の目的が達成された場合には、対応する基本金を取崩します。
例:帳簿価額8,000万円の校舎を除却し、第1号基本金残高も8,000万円ある場合
事業活動収支計算書では、「基本金取崩額」として収入計上され、その後、設備の建替えのための積立金に振り替えるなどの処理を行います。
実務でよくあるミスとしては、
固定資産の除却・売却の仕訳を起票するときは、必ず基本金残高も同時に確認するという運用ルールを作っておくと安心です。
基本金は、単なる会計上の区分ではなく、「この学校を長く続けるために、最低限守るべきお金」のラインを示しています。理事長・学長クラスでは次の点を定期的にチェックすると有効です。
実務担当者としては、
学校法人会計における基本金は、
まずは自法人の
基本金の区分や組入計画、取崩しの処理に少しでも不安があれば、学校法人会計に詳しい公認会計士に早めに相談することで、決算や監査の場面でも安心して説明できる体制づくりにつながります。