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学校法人では、校舎や体育館、机・椅子、ピアノ、パソコンなど多くの固定資産を保有しています。ところが、長年使っているうちに「台帳にはあるが現物がない」「逆に現物はあるのに台帳に載っていない」といったズレが生じがちです。このズレを放置すると、計算書類の信頼性だけでなく、内部統制や補助金のチェックでも指摘を受けるおそれがあります。そこで重要になるのが、計画的な固定資産の棚卸です。本記事では、学校法人の実務に合った棚卸の進め方と注意点を整理します。
固定資産棚卸の目的は、固定資産台帳(固定資産の一覧表)と現物の一致を確認することにあります。
・不稼働資産や廃棄済み資産を洗い出し、適切に除却できる
・盗難・紛失リスクを抑え、管理責任の所在を明確にできる
・計算書類や監査対応の説得力が高まり、ガバナンス強化につながる
このように、棚卸は単なる事務作業ではなく、法人全体の資産管理レベルを底上げする取り組みといえます。
実務で取り組みやすい形に分解すると、次のステップがおすすめです。
学校法人では、教育用備品が多く、少額なものも固定資産として計上されているケースがあります。例えば、理科実験機器や音楽室の楽器、情報教室のパソコンなどです。これらは入替えも頻繁なため、棚卸の際に特に差異が出やすいと感じられます。
また、補助金や寄附金で取得した資産は、交付要綱に保有期間や用途制限が定められていることがあります。除却や売却を行う前に、補助金の担当部署と連携し、必要な手続や報告を確認しておくべきです。
ある学校法人では、情報教室のパソコン更新時に古い機器の行き先が曖昧なまま入替えを続けていた結果、台帳上は数十台残っているのに現物はほとんど存在しないという事態が判明しました。棚卸を機に、更新時には必ず除却手続と証拠保存を行うフローを整備し、その後の監査指摘が大幅に減った例もあります。
固定資産の棚卸は、時間も人手もかかるため後回しにされがちですが、私立学校法人のガバナンスを支える重要な業務です。
・固定資産台帳と現物の一致を確認する
・除却や用途変更は、内部手続と記録を丁寧に残す
・補助金・寄附金資産は要綱を必ず確認する
これらを意識して計画的に取り組めば、監査対応だけでなく、資産の有効活用や設備更新計画の精度向上にもつながります。自法人の現状を一度整理したいとお考えでしたら、学校法人会計に詳しい専門家にご相談いただくことで、効率的な棚卸体制づくりをお手伝いできます。