「退職金の準備に養老保険を勧められたが、会計処理や税務がよく分からない…」「本当に会社のメリットになるのか不安…」という経営者・経理担当者の方は少なくありません。養老保険は設計を間違えなければ、万一の保障と退職金原資づくりを両立できる便利な仕組みです。一方で、契約形態によっては思わぬ給与課税や否認リスクも生じます。本記事では、法人が養老保険を活用する際に知っておきたい会計・税務の基本と、実務上の注意点を整理します。

養老保険を法人で契約する主な目的

まず、養老保険とは「一定期間内に死亡した場合も、生存して満期を迎えた場合も保険金が支払われる生命保険」です。法人で契約する典型的な目的は次のとおりです。

• ・役員・従業員の退職金原資の準備
• ・万一の死亡保障の確保
• ・福利厚生として安心感を提供すること
• ・将来の設備投資や資金需要に備えた解約返戻金の活用

どの目的を優先するかで、保険金の受取人や加入対象者の設計が変わり、それに連動して会計・税務処理も変わってきます。

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税務上の基本ルール（保険料の取扱い）

法人が契約者となり、役員・従業員を被保険者とする養老保険では、
「誰が保険金を受け取るか」によって保険料の取扱いが変わります。

代表的なパターンは次の3つです。

①死亡保険金・満期保険金とも法人が受取人

• ・保険料のうち半分を資産「保険料積立金」等という資産に計上します。
• ・保険料のうち半分は費用として処理します。
• ・満期や解約時に受け取る保険金と積立金との差額が、雑収入（益金）や雑損失（損金）になります。

②死亡・満期とも被保険者本人や遺族が受取人

• ・支払保険料は、その役員・従業員への「給与（役員の場合は賞与）」とみなされます。
• ・会社側では給与として損金算入できますが、個人側で所得税・住民税の課税対象になります。

③死亡保険金は遺族、満期保険金は法人（いわゆる福利厚生プラン）

• ・一定の要件を満たす場合、保険料の一部を「福利厚生費」として損金算入し、残りを保険料積立金として資産計上する取扱いがあります。
• ・ただし、役員だけ、同族関係者だけが加入するような偏った設計だと、福利厚生とは認められず給与として課税されるリスクがあります。

※税務の取扱いは執筆時点の法人税基本通達9-3-4および国税庁タックスアンサー等に基づいています。

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経理処理の具体例

例：福利厚生プラン型養老保険に年払保険料55万円で加入した場合

• ・契約者：法人
• ・被保険者：役員・従業員全員
• ・死亡保険金受取人：遺族
• ・満期保険金受取人：法人

保険料のうち半分を費用、半分を資産とするケースをイメージすると、仕訳は次のようになります。

保険料支払時（年払 550,000円）

• ・借方　保険料積立金　275,000円（将来の解約返戻金のイメージ）
• ・借方　福利厚生費　　275,000円（当期の費用）
• ・貸方　普通預金　　　550,000円

満期または解約時に保険金を受け取ったとき

たとえば、解約返戻金が11,000,000円、帳簿上の保険料積立金が6,000,000円残っていた場合：

• ・借方　普通預金　　　11,000,000円
• ・貸方　保険料積立金　 6,000,000円
• ・貸方　雑収入　　　　 5,000,000円（課税対象の益金）

このように、加入時だけでなく、将来の解約・満期時の仕訳まで見通しておくことが重要です。

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活用時の注意点とよくある誤解

養老保険を法人で活用する際には、次の点に注意が必要です。

実務では、「誰を守りたいのか」「退職金をどの水準で準備したいのか」を明確にしたうえで、税務と会計のバランスを取ることがポイントになります。

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まとめ

養老保険の法人契約は、

• ・退職金原資づくり
• ・万一の保障
• ・福利厚生の充実

を同時にかなえることができる一方、契約形態を誤ると給与課税や否認リスクを招く可能性があります。保険料の損金・資産計上の考え方、満期・解約時の仕訳、役員だけ加入する場合の注意点などを事前に理解しておくことで、安心して活用しやすくなります。

弊事務所では、貴社の目的や財務状況に合った養老保険の設計をご提案しています。具体的なシミュレーションや会計処理の確認をしながら進めたい場合は、ぜひ一度ご相談ください。