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内部統制整備学校法人監査

2024.5.16

【内部統制】学校法人 内部統制の整備ポイント3選―実務で押さえたい基本

学校法人では、理事長や事務局長が「不正やミスを防ぎたいが、どこから手を付ければよいのか分からない」と悩まれることが多いです。内部統制は、難しい専門用語のように見えて、要するに「お金と情報の流れを見える化し、不正とミスを防ぐ仕組み」です。ポイントを押さえて整備しておけば、監査対応だけでなく、日々の業務負担の軽減にもつながります。本記事では、学校法人がまず取り組みたい内部統制の基本を、実務の流れに沿って整理します。

学校法人に内部統制が必要な理由

学校法人の特徴として、

  • ・授業料・補助金・寄附金など多様な収入がある
  • ・現場任せの慣行が多く、属人化しやすい
  • ・理事会・評議員会などガバナンスが重視される

といった点が挙げられます。これらを放置すると、横領や架空支出だけでなく、「説明はできるが証拠が残っていない」という状態になりがちです。内部統制を整えることは、コンプライアンスだけでなく、ステークホルダーへの説明責任を果たすうえでも不可欠といえます。

まず整備したい3つの基本

内部統制と言うと難しく聞こえますが、最初に押さえるべきは次の3点です。

  1. 権限と責任の明確化
    • ・支出の承認者を金額ごとに区分する
    • ・現金・預金・契約締結など、重要な権限者を規程に明記する
  2. 職務分掌(仕事の分担)の整理
    • ・出納、記帳、承認、資産管理をできるだけ別の人が担当する
    • ・やむを得ず一人に集中する場合は、月次で上長がチェックする仕組みを設ける
  3. 証憑書類と記録の保存ルール
    • ・請求書・見積書・契約書を支出伝票に必ず添付する
    • ・電子データも含め、保存期間と保管場所を決めておく

これらを「経理規程」「文書管理規程」などの形で文書化しておくと、担当者が変わっても運用しやすくなります。

実務でよくある弱点と改善例

よく見られるのが、部活動や研究費などの「小口支出」がブラックボックスになっているケースです。例えば、顧問教員が

  • ・見積取得
  • ・注文
  • ・検収
  • ・支払依頼

をすべて一人で行っている学校もあります。この場合、少額でも不適切支出のリスクが高まります。改善策としては、

  • ・部署ごとに年間予算を設定し、執行状況を一覧で管理する
  • ・一定額以上の購入は本部経由に限定する
  • ・発注者以外の職員が検収を行う

といったルールを追加すると、負担を大きく増やさずにリスクを下げられます。

文書化と研修で「形だけ」を防ぐ

せっかく規程を整備しても、現場が理解していなければ形骸化してしまいます。次の点を意識すると運用が定着しやすくなります。

  • ・新任教員・事務職員向けに、毎年1回の内部統制説明会を行う
  • ・「してはいけないこと」だけでなく、「なぜ必要か」を具体例とともに伝える
  • ・公認会計士の指摘事項を職員間で共有し、改善状況を確認する

こうした地道なコミュニケーションが、組織文化としての内部統制を支えます。

まとめ:まずは「見える化」から始めましょう

学校法人の内部統制は、完璧を目指すより「重要なリスクから順に、ルールと記録を見える化する」ことが現実的です。

  • ・権限と責任を明確にする
  • ・職務分掌を整理する
  • ・証憑と記録を残す

という3つの基本を押さえるだけでも、不正・ミスの防止効果は高まります。
当事務所では、現状の業務フローを確認しながら、規程の整備や運用の仕組みづくりをお手伝いしています。自法人の内部統制が十分か不安を感じられた場合は、一度ご相談いただければ幸いです。

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