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「退職金の準備に養老保険を勧められたが、会計処理や税務がよく分からない…」「本当に会社のメリットになるのか不安…」という経営者・経理担当者の方は少なくありません。養老保険は設計を間違えなければ、万一の保障と退職金原資づくりを両立できる便利な仕組みです。一方で、契約形態によっては思わぬ給与課税や否認リスクも生じます。本記事では、法人が養老保険を活用する際に知っておきたい会計・税務の基本と、実務上の注意点を整理します。
まず、養老保険とは「一定期間内に死亡した場合も、生存して満期を迎えた場合も保険金が支払われる生命保険」です。法人で契約する典型的な目的は次のとおりです。
どの目的を優先するかで、保険金の受取人や加入対象者の設計が変わり、それに連動して会計・税務処理も変わってきます。
法人が契約者となり、役員・従業員を被保険者とする養老保険では、
「誰が保険金を受け取るか」によって保険料の取扱いが変わります。
代表的なパターンは次の3つです。
①死亡保険金・満期保険金とも法人が受取人
②死亡・満期とも被保険者本人や遺族が受取人
③死亡保険金は遺族、満期保険金は法人(いわゆる福利厚生プラン)
※税務の取扱いは執筆時点の法人税基本通達9-3-4および国税庁タックスアンサー等に基づいています。
例:福利厚生プラン型養老保険に年払保険料55万円で加入した場合
保険料のうち半分を費用、半分を資産とするケースをイメージすると、仕訳は次のようになります。
保険料支払時(年払 550,000円)
満期または解約時に保険金を受け取ったとき
たとえば、解約返戻金が11,000,000円、帳簿上の保険料積立金が6,000,000円残っていた場合:
このように、加入時だけでなく、将来の解約・満期時の仕訳まで見通しておくことが重要です。
養老保険を法人で活用する際には、次の点に注意が必要です。
■ 役員だけ加入していると福利厚生と認められないおそれ
⇒同族会社で役員・親族だけを対象にすると、損金算入部分が「役員賞与」とみなされ否認されるリスクがあります。
■節税だけを強調したスキームは危険
⇒通達に明記されていない無理な設計に対しては、近年、税務当局や裁判所が厳しい姿勢を取っている事例も出ています。
■財務指標への影響もチェックすること
⇒保険料積立金が多くなると、実態としては流動性の低い資産が増えるため、銀行からの見え方にも影響します。
■退職金規程との整合性
⇒退職金の支給基準や支給先と、養老保険の被保険者・保険金受取人の設計がずれていると、後から説明が難しくなります。
実務では、「誰を守りたいのか」「退職金をどの水準で準備したいのか」を明確にしたうえで、税務と会計のバランスを取ることがポイントになります。
養老保険の法人契約は、
を同時にかなえることができる一方、契約形態を誤ると給与課税や否認リスクを招く可能性があります。保険料の損金・資産計上の考え方、満期・解約時の仕訳、役員だけ加入する場合の注意点などを事前に理解しておくことで、安心して活用しやすくなります。
弊事務所では、貴社の目的や財務状況に合った養老保険の設計をご提案しています。具体的なシミュレーションや会計処理の確認をしながら進めたい場合は、ぜひ一度ご相談ください。