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労働組合で初めて会計監査を受ける場合、「決算が終わってから資料を渡せばよい」と考えてしまうことがあります。しかし初年度は、通常の決算監査だけでなく、予備調査、期首残高監査、現金実査、残高確認状の発送準備まで必要になることがあります。労働組合は、会計報告を職業的に資格がある会計監査人の証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表することが求められます。初回監査を円滑に進めるには、定期大会の日程から逆算して、早めに監査スケジュールを組むことが重要です。
初年度は、まず予備調査から始めるのが一般的です。予備調査とは、監査を受けられる状態にあるか、帳簿、証憑、規程、承認手続の整備状況を確認する手続です。
主な確認事項は次のとおりです。
・労働組合規約、会計規程の有無
・総会、定期大会、執行委員会の議事録
・収支計算書、貸借対照表の作成状況
・通帳、領収書、請求書の保存状況
・支部会計、特別会計の有無
・チェックオフによる組合費徴収の管理方法
この段階で不足資料が分かれば、決算前に整理できます。初めての監査では、科目の使い方、領収書の保存方法、支出承認の記録に改善点が見つかることが少なくありません。
初年度監査では、期首残高監査も重要です。期首残高監査とは、監査対象年度の開始時点における現金、預金、未収金、未払金、積立金などの残高が正しいかを確認する手続です。初年度監査では、監査人が期首残高について十分かつ適切な監査証拠を入手することが必要とされています。
例えば、前年度末の計算書類と当年度期首の帳簿残高が一致していない場合、その原因を確認しなければなりません。過年度から引き継いだ積立金の内訳が不明な場合も、過去の総会資料、計算書類、通帳をもとに整理しておく必要があります。
決算後にまとめて確認するのではなく、期中に一度確認を受けると監査はスムーズに進みます。
・組合費収入とチェックオフ明細の照合
・旅費、日当、会議費の支出承認状況
・支部会計からの報告資料の確認
・予算と実績の差異確認
・領収書、請求書の整理状況
実務上は、半年経過時点で一度確認しておくと、決算時の修正が少なくなります。例えば、執行委員会承認が必要な支出について議事録が未作成であれば、決算後ではなく期中に整備しておくことができます。
現金等の現物を保有している労働組合では、実査も重要な手続です。現金実査とは、監査人が実際に金庫や手元現金を確認し、帳簿残高と一致しているかを確かめることです。
現金実査に向けて、次の資料を準備します。
・現金出納帳
・金庫内の現金
・小口現金の精算書
・未精算の仮払金明細
・実査日までの入出金記録
実務上は、監査人が訪問する日に合わせて、現金を動かさない時間帯を決めておくとスムーズです。例えば、会議費や交通費の精算を監査当日の朝にまとめて行うと、帳簿残高と現金残高が合わず、確認に時間がかかります。
預金、借入金、未収金、未払金などがある場合には、残高確認状の発送が必要になることがあります。残高確認状とは、金融機関や取引先などの外部者に対して、期末時点の残高を直接確認する手続です。
労働組合で想定される確認先は次のとおりです。
・預金口座のある金融機関
・定期預金、積立金の預け先
・未収金、未払金がある取引先
・会社からの組合費入金に関する担当部署
・支部会計との貸借がある場合の支部
残高確認状は、監査人が発送・回収を管理することが一般的です。そのため、確認先の名称、住所、担当部署、口座番号、残高明細を早めに整理しておく必要があります。特に定期大会直前に発送すると、回答が間に合わないおそれがあります。
決算後には、計算書類の監査を行います。ここでいう計算書類とは、収支計算書、貸借対照表、財産目録、附属明細など、組合員に報告する会計資料をいいます。監査では、帳簿や証憑と照合し、収入・支出・財産残高が適切に表示されているかを確認します。
特に確認されやすい項目は次のとおりです。
・組合費収入とチェックオフ明細の一致
・旅費、日当、会議費の支出根拠
・支部会計からの報告内容
・積立金、特別会計の内訳
・予算実績差異の説明
決算監査で修正事項が出た場合、定期大会資料にも影響します。そのため、決算日後1か月以内に帳簿を締め、監査資料を提出できる体制を整えておくことが理想です。
決算後は、帳簿を締め、計算書類を作成し、監査資料を提出します。その後、監査人が証憑確認、現金実査、残高確認状の回答確認、質問、修正事項の確認を行い、最終的に会計監査報告書まを発行します。
一般的な流れは次のとおりです。
・会計監査契約締結時:予備調査、期首残高資料の確認
・決算日付近:現金実査、預金残高資料(残高確認状)の準備
・決算後1か月以内:帳簿締切、計算書類作成
・決算後1〜2か月:大会議案書の作成、決算監査の準備
・定期大会前:監査報告書の受領、組合員への報告準備
定期大会の日程が決まっている場合は、そこから逆算して、監査日、現金実査日、残高確認状の発送時期を確保しておくことが大切です。
はじめて会計監査を受ける労働組合では、決算後の資料提出だけではなく、予備調査、期首残高監査、現金実査、残高確認状の発送までを含めて準備する必要があります。特に初年度は、過年度からの繰越金、積立金、支部会計、チェックオフ明細の整理に時間がかかります。早い段階で公認会計士に相談すれば、不足資料や改善点を事前に把握でき、定期大会で組合員に説明しやすい会計報告につながります。労働組合会計に慣れた専門家とスケジュールを組むことで、初回監査の不安を減らし、信頼性の高い会計体制を整えることができます。