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社会福祉法人が私立保育所を運営している場合、当年度に収受した委託費をどこまで柔軟に使えるのかは、実務上とても重要な論点です。特に、複数の保育所や子育て支援事業、他の社会福祉施設を運営している法人では、資金を法人全体で有効活用したい場面があります。
しかし、私立保育所の委託費は、市町村から支弁される公的性格の強い資金です。そのため、自由な流用は認められず、府子本第254号・雇児発0903第6号通知に基づき、段階ごとの要件を満たす必要があります。254号通知では、委託費の弾力運用は「適切な施設運営が確保されていること」を前提として認められるものとされています。
第1段階は、当該保育所の運営に係る人件費、管理費、事業費について、費目区分にかかわらず使用する段階です。本来、人件費は職員給与等、管理費は物件費等、事業費は児童処遇に直接必要な経費に充てるものですが、一定要件を満たす場合には、当該保育所の人件費・管理費・事業費の間で弾力的に運用できます。
この段階を適用するためには、次のような要件をすべて満たす必要があります。
・児童福祉施設の設備運営基準を遵守していること
・委託費の交付基準や職員配置基準を守っていること
・給与規程が整備され、適正な給与水準が維持されていること
・給食や日常生活に必要な経費が適切に確保されていること
・保育所保育指針を踏まえ、児童処遇が適切であること
・理事長、施設長、職員等が研修に参加し資質向上に努めていること
・設置者の運営に問題となる事由がないこと
また、この要件を満たす場合には、人件費積立資産、修繕積立資産、備品等購入積立資産への積立も認められます。ただし、積立目的以外に使用する場合は、原則として事前協議が必要です。
第2段階は、同一設置者が設置する他の保育所等に対して、一定範囲で委託費を活用できる段階です。
この段階を適用するには、第1段階の7要件を満たしたうえで、延長保育、一時預かり、乳児受入れ、地域子育て支援拠点事業、障害児受入れ、休日保育、病児保育など、254号通知の別表1に掲げる事業等のいずれかを実施している必要があります。
認められる範囲は、処遇改善等加算の基礎分として加算された額に相当する額の範囲内です。使途としては、同一設置者が設置する保育所等の建物・設備の整備、修繕、環境改善、土地・建物の賃借料、これらに係る借入金償還、租税公課などが対象になります。
実務上は、「改善基礎分の範囲内か」「対象施設が保育所等に該当するか」「支出内容が別表2に該当するか」を確認することが重要です。
第3段階は、さらに広い範囲で委託費を活用できる段階です。第2段階の要件を満たしたうえで、保育サービスの質の向上に関する追加要件を満たす必要があります。
追加要件は、主に次の3つです。
・計算書類等を保育所に備え付け、閲覧に供していること
・第三者評価加算の認定を受ける、または苦情解決の仕組みを整備し公表していること
・処遇改善等加算の賃金改善要件、キャリアパス要件を満たしていること
この要件を満たす場合、改善基礎分相当額の範囲内で、同一設置者が運営する子育て支援事業や社会福祉施設等の一定経費に充当できます。さらに、委託費の3か月分相当額の範囲内で、同一設置者の保育所等や子育て支援事業に係る一定経費へ充当することも認められます。ただし、処遇改善等加算の賃金改善要件分は除かれる点に注意が必要です。
弾力運用は、黒字だから自由に使える制度ではありません。保育の質、職員処遇、給食、設備、研修、情報公開、苦情解決体制などが整っていることが前提です。
特に、次の資料は整備しておくべきです。
・弾力運用の判定資料
・改善基礎分、3か月分相当額の計算資料
・理事会議事録
・積立金・積立資産明細書
・対象経費が別表に該当することの確認資料
例えば、他施設の修繕費に充当する場合でも、どの段階の要件に基づく支出なのか、限度額を超えていないか、理事会でどのように説明したかを残しておく必要があります。
254号通知に基づく当年度委託費の弾力運用は、大きく分けて3段階で整理できます。
第1段階は、当該保育所内での費目間流用と積立です。第2段階は、別表1事業等を実施する保育所が、改善基礎分の範囲内で同一設置者の保育所等へ活用する段階です。第3段階は、情報公開や第三者評価、苦情解決、処遇改善要件などを満たしたうえで、子育て支援事業や社会福祉施設等まで活用範囲を広げる段階です。
弾力運用は法人経営に有効ですが、通知の段階と要件を誤ると行政指導につながります。社会福祉法人では、会計処理だけでなく、要件判定、理事会承認、限度額管理、証憑整理まで一体で確認することが重要です。