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企業主導型保育所を運営している法人では、年度末に利益が残った場合、積立金として処理してよいのか、どこまで認められるのかが悩ましい論点です。令和8年度からは、企業主導型保育事業における積立資産の取扱いが見直され、従来よりも柔軟になる一方で、金額上限が明確になります。決算時に慌てないためには、助成決定額を基準にした上限管理と、積立目的の整理が重要です。
これまで企業主導型保育事業の積立資産は、主に次の4区分で管理されていました。
・人件費積立資産
・備品等購入積立資産
・修繕積立資産
・保育所施設・設備整備積立資産
令和8年度からは、費目が次の3区分に整理されます。
・人件費積立資産
・備品等購入積立資産
・修繕積立資産
大きな変更点は、単に費目が減ることではありません。従来のような細かな費目別管理を見直し、累計上限の範囲内で積立を行う考え方へ変わる点が実務上重要です。
改正後は、積立できる金額に上限が設けられます。
・累計積立上限額:前年度の助成決定額の30%まで
・単年度積立上限額:当該年度の助成決定額の5%まで
例えば、前年度の助成決定額が4,000万円の場合、累計の積立上限は1,200万円です。また、当該年度の助成決定額が4,200万円であれば、その年度に新たに積み立てられる上限は210万円となります。
ここで注意したいのは、決算上の利益額だけを見て積立額を決めないことです。助成決定額、既存の積立残高、当年度の積立予定額を一覧表にして、上限超過がないか確認する必要があります。
既存の積立資産が累計上限を超えている施設については、令和12年度末までの5年間が猶予期間とされています。すぐに全額を取り崩すという対応ではなく、修繕計画、備品更新計画、人件費の安定化方針と合わせて、計画的に適正化を進めることが大切です。
実務では、次の資料を整えておくと安心です。
・積立資産の残高一覧
・助成決定額に基づく上限計算表
・今後5年間の取崩し予定
・理事会、取締役会等での承認記録
・積立目的と支出内容の対応表
特に、エアコン更新、給食設備の入替、園舎修繕などは金額が大きくなりやすいため、年度ごとの資金計画に反映しておくと説明がしやすくなります。
積立金は、帳簿上で科目を振り替えるだけでは不十分です。実際の預金残高と積立資産の残高が対応しているか、目的外に流用されていないか、決算書と報告資料に矛盾がないかを確認する必要があります。
また、企業主導型保育所は、一般企業、医療法人、社会福祉法人など運営主体が多様です。そのため、法人全体の会計と保育事業の会計を明確に区分しなければ、助成金の使途説明が難しくなることがあります。
令和8年度改正により、企業主導型保育所の積立金は、柔軟に運用しやすくなる一方、上限管理の正確性がより重視されます。年度末になってから判断するのではなく、期中の段階で助成決定額、積立残高、今後の支出予定を整理しておくことが重要です。
積立資産の処理は、会計処理、助成金実務、資金繰りが重なる専門性の高い分野です。上限計算や決算処理に不安がある場合は、企業主導型保育事業の会計に詳しい専門家へ早めに相談することで、監査や報告時の指摘リスクを抑え、安定した施設運営につなげることができます。