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社会福祉法人監査

2024.8.30

【不動産】社会福祉法人の固定資産税・不動産取得税・償却資産税の実務ポイント

社会福祉法人で新規施設の建設や建物の購入、設備更新を行うと、「固定資産税は本当に非課税なのか」「不動産取得税は減免になるのか」「償却資産税の申告はいるのか」といった不安がつきものです。税金の扱いを誤ると、後からまとめて課税されたり、本来受けられるはずの減免を逃したりしてしまいます。
本記事では、現場の経理ご担当者や理事長が最低限押さえておきたい、固定資産税・不動産取得税・償却資産税の基本と実務のチェックポイントを、社会福祉法人に絞って整理します。

1.社会福祉法人と固定資産税の基本

固定資産税は、土地・家屋・償却資産(機械・設備など)にかかる市町村税です。

社会福祉法人だからといって「法人名義の資産は全部非課税」になるわけではなく、地方税法で定められた社会福祉事業などの用に供する資産だけが非課税となります。

代表的な非課税の例

  • ・特養、老健、障害者支援施設、保育所、認定こども園などの本体施設
  • ・上記事業に直接使用する土地・建物・設備

一方で、次のようなケースは課税となりやすい点に注意が必要です。

  • ・収益事業で使用する建物(有料老人ホーム、駐車場、テナント賃貸用ビルなど)
  • ・職員寮・社宅・福利厚生施設
  • ・遊休地や将来利用予定地

ポイントは「誰の名義か」ではなく「何の用途か」という点です。用途区分ごとに固定資産台帳を整理しておくと、税務調査や自治体からの照会にもスムーズに対応できます。

2.不動産取得税:取得時だけの税だが減免申請がカギ

不動産取得税は、土地や建物を取得したときに一度だけ都道府県に納める税金です。課税標準は原則として固定資産税評価額、税率は土地・住宅で3%、その他家屋で4%が一般的です。

社会福祉法人の場合、次のような社会福祉事業の用に供する不動産については、不動産取得税が非課税または減免される制度があります。

  • ・児童福祉施設(保育所・児童養護施設 等)
  • ・老人福祉施設(特養 等)
  • ・障害者支援施設
  • ・その他、社会福祉法上の社会福祉事業の用に供するもの

ただし多くの都道府県で、

  • ・取得後一定期間内に「減免申請書」等の提出が必要
  • ・事業計画書・定款・登記事項証明書などの添付が必要

とされています。申請をしなければ自動的には非課税にならず、通常の税額がそのまま課税されてしまいます。

実務上は、土地建物の取得を決めた段階で、必ず都道府県税事務所に事前相談を入れることが大切です。

3.償却資産税(償却資産にかかる固定資産税)

償却資産税とは、建物以外の事業用資産(空調設備、厨房機器、エレベーター、太陽光設備、送迎車以外の車両運搬具など)にかかる固定資産税です。

社会福祉法人が所有する償却資産についても、

  • ・社会福祉事業の用に供するものは非課税となる場合がある
  • ・ただし、非課税であっても原則として「償却資産申告書」+「非課税申告書」の提出が必要

とされる自治体が多くなっています。

注意したい課税となりやすい償却資産の例

  • ・有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の設備
  • ・月極駐車場用のアスファルト舗装やフェンス
  • ・完全に職員向けの福利厚生施設の設備

毎年1月1日時点の状況を基準に、その年の1月31日前後までに申告期限が設定されていることが一般的です。期限を過ぎると、後から資産が把握された際に複数年分まとめて賦課されることもあります。

4.現場で必ず押さえたい3つのチェックポイント

  • ① 用途別に資産を区分して台帳管理する
    社会福祉事業・公益事業・収益事業・職員用など、用途ごとに土地・建物・設備を管理しておくと、非課税判定や申告書作成が格段に楽になります。
  • ② 新築・増改築・大規模設備投資の前に自治体へ相談する
    図面や事業計画の段階で、市町村(固定資産税)・都道府県(不動産取得税)の担当部署に事前相談をしておくと、後から「思っていたより課税対象が多かった」というリスクを減らせます。
  • ③ 納税通知書・課税明細を毎年チェックする
    非課税にすべき資産に固定資産税がかかっていないか、逆に課税すべき資産が漏れていないかを確認しましょう。誤りがあれば更正や還付の余地があるため、早めの見直しが安心です。

まとめ

社会福祉法人の固定資産税・不動産取得税・償却資産税は、「法人だから非課税」ではなく、「どの事業のために、どのように使っているか」で税額が大きく変わる仕組みになっています。
新規施設の建設や建物購入のタイミングだけでなく、用途変更や改修工事の際にも、資産の用途区分と減免申請の有無を一度立ち止まって確認することが重要です。

自法人の資産が適切に非課税・課税区分されているか不安な場合は、固定資産台帳と納税通知書を一式そろえたうえで、社会福祉法人に詳しい専門家にご相談いただくと安心です。

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